ムンク好きの人のブログですが、ムンクは静物画がありません。
人物と風景、群像が中心です。
ムンクの興味の中心が人間に向かっていたことは間違いがないでしょう。
ムンクの興味が人間にあったことと、
風景画も多いのは、北欧の気候が人に与える影響を感じ取ってたこと。
バルト海は、海がのっぺりとしていて、絵具を流したようなたるんとした感じがあります。
ノルウエーの風景の中にいる人物は、それだけでも絵になります。
また、ムンクのサマーハウスのあるオースゴールストランは、
避暑地独特の興奮と妖しさがあります。
今日は、静物の絵です。
それも、角度の問題です。
どこから見ているのかが重要な問題です。
物を実際に見て描くことは、セザンヌの時代から、絵を描く人には必要な修行です。
実際に物を見て描くのは、いつでも勉強になります。
オレンジはオレンジ色で塗ればいいというものでもなく、
黄色やグリーンなど、
オレンジになるまえの歴史
まだグリーンの実から熟していく段階、黄色、オレンジ色、
光の関係、シャドウのグレーなど
色々なプロセスを経て、そして腐っていく。
絵では、においはしませんが。
青くて酸っぱい香りから、腐りゆく匂い。
セザンヌは、リンゴで世界を驚かせるといいましたが、
その存在感、空間意識は、まさに近代絵画の父。
写真では表すことのできない、空気を表現したということは
画期的なことです。
写真では、風によって動くものを一緒に写りまこませることで表現します。
風を受けている木とか、流れる雲、煙などです。
始めの構図は、ポットとコンポートが離れていました。
しかし、上からテーブルを俯瞰する絵なので、
そのまま描いては、テーブルの上の物の面が合わないので
ものが、転げて落ちてしまいます。
そこで、テーブルの真ん中に俯瞰をしていることを決定づける
重なりを持ってくることで、
面を合わせることができます。
オブジェクトが重なっていることで
簡単に表すと
角度が出るのです。
こうすることで、絵を描くのが楽になります。
どこから、どの角度で物を見ているかをはっきりさせると
リアリテイが出てくるのです。
物を実際に見て描くことは、一丁目1番地、
この道を行くことで、セザンヌの見た風景にたどりつくと信じて
一歩ずつ歩いていくだけです。
しかし、この完成直前の絵には、
ナイフがありません。
これは、自分で想像して描きました。
垂直方向のオブジェクトが強すぎるので、
水平方向の力が欲しかったからです。
すべてがあるものだけというわけではないので、
そこは工夫が必要です。
もちろん、オレンジの位置も、ソックリそのままの位置ではありません。
オレンジのへそというか、てっぺんのぽっちの方向も絵の大事な要素になるのです。
全部が上を向いていたら変になります。
色をセピアに変えたら、構図が見やすくなります。
オレンジは、おおむね丸いですが、
エッジを効かせないと緊張感のないオレンジになります。
セザンヌは、重い絵の具を背負って、毎日写生に出かけました。
彼もまた、実際に見て描くという道を信じて歩いていたのでしょう。