絵画は長らく外界にあるものを写すものでした。
印象派の時代でもまだ、対象は自分より外側にあるものでした。
後期印象派に入ると、セザンヌが混とんの自然をいったん人間の理性のフィルターを通して描き始めました。
それこそが、近代絵画の父たるゆえんです。
しかし、そのあと現れた表現主義は、自然のみならず、
人間、生と死、人生、社会すべてを、いったん自分の中に取り入れ、
自分を信じて表現する表現運動です。
それゆえ、独りよがりになりがちですが、生と死、人生を考える上では、自分を信じることのみが道しるべになりました。
表現主義から、抽象、象徴、シュール、キュビスムなどの運動生まれたと考えていいのではないのでしょうか。
その中でもムンクは、生と死、人生を見つめ、哲学と旅をした稀有な天才です。
このアトリエの窓から彼は何を見ていたのでしょう。
海や入り江を見ながら何を考えていたのでしょう。